ラプソード計測データ解説②「回転数」
皆さん、こんにちは!
今回はラプソードで計測できるデータポイントがどのような意味を持つのか、どう活用したらよいのか等について解説していきたいと思います。
第2回となる今回は、「回転数」についてです。
データ活用をしてみたいすべての選手、指導者、そしてチーム関係者の皆さまのご参考になればと思います。ご自身が知りたいと思うポイントから、ぜひご一読ください。
※ラプソードの導入については以下の2つの記事でまとめていますので、ご興味のある方はこちらも合わせてお読みください。
1. 「回転数」とは
1-1. 「回転数」の定義
「回転数」とは、投球されたボールが1分間に何回転したかを表し、RPM (Revolution per minute)という単位で示されます。そのため投球間に記録された回転数ではない点に注意が必要です。
1-2. 「回転数」の表示位置
ラプソードのiPadアプリ「Diamond」において、投球のセッション時に回転数は計測画面の以下の位置に表示されます:
投球時のリアルタイムの回転数が表示されます。
2. 「回転数」の活用法
2-1. ストレートの回転数は球速に比例する
ストレートの回転数は、「球速に比例して多くなる」という傾向を持っています。
以下はラプソードユーザーの高校野球チーム複数校で計測した球速と回転数の関係を表したものですが、球速が上がるにつれて回転数も増えていることが分かると思います。
そのため回転数を見るときは、球速と合わせて自身の現在地を確認する必要があります。
たとえば球速と比較して回転数が少ない場合は、投球フォームやボールの握りなどが原因で本来出せるはずの回転数が出せていない可能性があります。
その原因は多岐に渡りますが、トレーナーの高島誠さん (@littlemac0042)は「親指でロックしていないか」がチェックポイントの一つだと話しています。詳細はぜひ以下の記事からご確認ください。
ストレートの球速と比較して回転数が多い場合は、ボールにより大きな変化を与えるポテンシャルがあると言えます。ただ真っスラ気味(回転効率が低い、カットボールのような球質)でも回転数は多くなりやすいので注意しましょう。
加えて、以下はラプソードを活用しているMLB投手の変化球ごとのデータ一覧です。一番左側の球種 (PITCH TYPE)と二番目の回転数 (SPIN RATE)にご注目ください。
スライダー (2400-2500)、カットボール (2350-2450)、カーブ (2500-2600)などの球種でストレート (2250-2350)よりも回転数が多くなっていることが分かります。
そのため、ボールに強く回転をかけて変化を生み出すこれらの球種で、回転数がストレートよりも少なくなっている場合も、投げ方に改善できるポイントがないか検討する必要があるかもしれません。
2-2. 回転数はボールの変化量に影響を与える要素の一つ
また回転数は、ボールの変化量に影響を与える要素の一つでもあります。
そのため球種を問わず、回転数が上がることで変化量が大きくなり、回転数が下がると変化量は少なくなる傾向にあります。
ただ回転方向、ジャイロの角度(回転効率)も変化量に影響を与える重要な要素となりますので、回転数の多さのみでボールの変化量が決まる、例えば「回転数が多い=ボールのノビがある」とはならない点に注意が必要です。
回転数、回転方向、ジャイロの角度(回転効率)が変化量にどう影響を与えるかは、また変化量の回に詳しく説明できればと思います。
2-3. 回転数だけで「ボールの打たれにくさ」を評価できない
以上2点により、回転数の特性についてご理解頂けたと思います。
ここから、回転数だけでは「ボールの打たれにくさ」を評価することはできないと言うことができます。
近年ではプロ野球中継などでも回転数がリアルタイムに表示されるようになりました。その際に回転数の高数値を見て球質を評価する声も多く聞かれますが、回転数だけではボールの球威や打たれやすさを判断することはできません。
前述の通り、回転数の多いボールは球速も速いケースが多いため、その分打ちにくくなっているとも言えます。
※球速の特性については、以下の解説noteをご一読ください!
またどんなにストレートの回転数が多くても、回転軸が傾いていればその分ホップ成分の高い(=縦の変化量の多い)、いわゆるノビる球質にはならないため、やはり回転数だけでボールの球質の良さを判断することは難しいです。
回転数は球速と関係が深く、また回転方向やジャイロの角度(回転効率)とともに変化量に影響を与える指標であることを理解しましょう。これはデータを活用したパフォーマンスの向上のみならず、今後の野球観戦にもきっと役に立つことと思います。
3. 「回転数」の分析方法
ここからは、ラプソードで提供している分析ツールを使ってどのように「回転数」を分析できるのか、その事例をいくつか紹介していきたいと思います。
①平均回転数と最高回転数の推移を確認(クラウド / Diamond App)
ラプソードのクラウドおよびiPadアプリ「Diamond」では、各選手のセッション(1回の計測)ごとに各球種の平均回転数、最高回転数などのデータを確認することができます。
球種ごとの平均回転数、最高回転数がどのように推移しているかを確認することは、球速同様にとても重要です。日々の計測の中で数値がどれだけ伸びているか上昇具合を確認することは、各球種の変化量が目標に到達しているかを考える上でも重要になってきます。
また以下のフルタの方程式【古田敦也 公式チャンネル】の動画では、回転数を上げるためのリリースについて詳しく解説されています。ぜひ一度ご覧ください。
また球種ごとの回転数を把握しておくことで、あるセッションで数値が落ち込んだときに、「怪我の予兆ではないか?」など、異変にいち早く気づいて選手へヒヤリングしたりアクションを起こすことにも繋がります。
コンディショニング管理の面からも、回転数の推移をチェックすることは重要です。
②セッション内での回転数の推移を確認(クラウド)
クラウドではセッションごと、または一定の区切った期間における回転数の推移を確認することも可能です。
たとえば投げ込みを行う中で、何球目に球速および回転数が落ちていくかの傾向をデータとして把握することができれば、投手ごとのスタミナや試合における交代時期を判断するための一つの基準となり得ます。
怪我の予防に加えて、実戦での投手起用を考える上でも効果的だと言えます。
▼関連記事:
③各球種の変化量を調整(Diamond App)
計測中においては、一球一球リアルタイムに数値を確認しながら、各球種の球質改善のため試行錯誤することができます。
前述の通り、回転数は回転方向・ジャイロの角度(回転効率)といった指標と合わせてボールの変化量に影響を与えるため、これら回転系の数値を変動させながら理想の変化量を追求します。
以下の動画は西武ライオンズの平良海馬投手の実例です。変化量の目標値を出すために回転数やSpin efficiency(=回転効率)がどのように変動したらよいかを解説されています。
このように各数値がどう作用しているかが理解できていると、変化球を習得する・改善するプロセスもより効率化されると思います。
ぜひ参考にしてみてください。
4. まとめ
以上、「回転数」について解説しました。
今後もラプソードで計測できるデータポイントがどのような意味を持つのか、どう活用したらよいのか等について解説していきます。
次回は「回転軸(回転方向・ジャイロの角度)・回転効率」について取り上げます。
引き続き公式noteをどうぞよろしくお願いします!