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ラプソード計測データ解説①「球速」

皆さん、こんにちは!
今回はラプソードで計測できるデータポイントがどのような意味を持つのか、どう活用したらよいのか等について解説していきたいと思います。

第1回となる今回は、「球速」についてです。

■計測できる機器:PITCHING 2.0PRO 3.0

データ活用をしてみたいすべての選手、指導者、そしてチーム関係者の皆さまのご参考になればと思います。ご自身が知りたいと思うポイントから、ぜひご一読ください。

※ラプソードの導入については以下の2つの記事でまとめていますので、ご興味のある方はこちらも合わせてお読みください。


1. 「球速」とは

1-1. 「球速」の定義

「球速」とは、投球されたボールのスピードを表します。

ラプソードの計測機器(PITCHING 2.0、PRO 3.0)では投球の初速を球速としてアプリ上に表示しており、これはテレビ中継等で表示される数値と同様です。

1-2. 「球速」の表示位置

ラプソードのiPadアプリ「Diamond」において、投球のセッション時に球速は計測画面の以下の位置に表示されます:

iPadアプリ「Diamond」の計測画面上部中央に球速は表示される

投球時のリアルタイムの球速が表示されます。

また画面右側の投球データには、各セッションにおける「平均球速」と、「最高球速」を表示することができます。

2. 「球速」の活用法

2-1. ストレートの球速は速ければ速いほど、打者を打ち取る可能性が高まる

球速は、多くの方がイメージされるように「速ければ速いほど、打者を打ち取る可能性が高まる」と言うことができます。

以下は2021年のNPBにおけるストレートの球速帯別の被打率を表していますが、球速帯が上がるほど被打率が下がっていることが分かります。
※投球数の少ない135キロ以下は除く

2021年NPBのストレート球速帯別被打率と投球数

また被打率以外にも、スイング率スイング/投球数空振り率空振り/投球数と言った指標においても顕著な傾向が表れています。

スイング率、空振り率ともに球速帯が上がるにつれて上昇しており、「速ければ速いほど、打者が手を出しやすい、空振りしやすくなる」と言う投手有利な状況が作りやすいことが分かります。

2021年NPBのストレート球速帯別スイング率と投球数
2021年NPBのストレート球速帯別空振り率と投球数

そのため投手としては、試合に勝つ、失点を抑えるための王道としてまずは球速アップを目指すべきだと言えます。これはプロの投手に限らず、アマチュアの投手にも適用できる基本的な考え方だと言ってもいいでしょう。

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2-2. 「速くても打たれる」「遅くても抑えられる」は何故か

「球速が速ければ速いほど、打者を打ち取る可能性が高まる」ということが原則として正しい一方で、恐らく多くの方が「速くても打たれる投手や、遅くても抑えられる投手がいるのでは」と思われたかと思います。

その理由は個々の投手によっても異なりますが、例えば下記がその一例として挙げられます:

■速くても打たれる場合:

  • ストレートの変化量が平均的である

  • 配球がストレートに偏っている

  • 球種ごとに投球フォームの違いが明らか

■遅くても抑えられる場合:

  • ストレートの縦の変化量が大きい(ホップするようなノビを感じる)、横の変化量が大きい(胸元に食い込むような強いシュート回転)など特徴がある

  • 変化球をうまく織り交ぜ、的を絞らせない

  • 球種ごとの投球フォームの違いが小さい

縦横の変化量はラプソードでも計測できる指標のひとつであり、球速と同様に打者に影響を与える重要な指標です。投手ごとにどのような特徴があるか把握したり、目標値を設定して改善に取り組んでいくことに活用できます。

投手育成の面においては、ラプソードを活用することで球速UPと球質の向上を両立させつつ、指導者・キャッチャーの視点も活用して配球や投球フォームなど計測できない点を補うことも重要になります。

球速は最重要指標のひとつですが、「数値を出すことが目的ではなく、試合に勝つことが目的である」ということを念頭に置きながら、日々計測を行うべきだと言えるでしょう。

3. 「球速」の分析方法

ここからは、ラプソードで提供している分析ツールを使ってどのように「球速」を分析できるのか、その事例をいくつか紹介していきたいと思います。

①平均球速と最高球速の推移を確認(クラウド / Diamond App)

ラプソードのクラウドおよびiPadアプリ「Diamond」では、各選手のセッション(1回の計測)ごとに各球種の平均球速、最高球速などのデータを確認することができます。

クラウドで計測できる球種ごとの計測データ(Velo=平均球速、Max. Velo=最高球速)
iPadアプリ「Diamond」で計測後に確認できるグラフ、表の一例

平均球速、最高球速がどのように推移しているかを確認することはとても重要です。日々の計測の中で数値がどれだけ伸びているか上昇具合を確認することはもちろん、平均球速と最高球速の差をどれだけ縮められているかも、実戦で活躍できるかどうかにおいては必要な視点になります。

また球種ごとの平均球速を把握しておくことで、あるセッションで数値が落ち込んだときに、「怪我の予兆ではないか?」など、異変にいち早く気づいて選手へヒヤリングしたりアクションを起こすことにも繋がります。

コンディショニング管理の面からも、球速の推移をチェックすることは重要です。

②セッション内での球速の推移を確認(クラウド)

クラウドではセッションごと、または一定の区切った期間における球速の推移を確認することも可能です。

クラウドから出力できるPDFの一例。
球数が増えていくにつれて、球速・回転数にどう変化があるか確認できる。

たとえば投げ込みを行う中で、何球目に球速および回転数が落ちていくかの傾向をデータとして把握することができれば、投手ごとのスタミナや試合における交代時期を判断するための一つの基準となり得ます。

怪我の予防に加えて、実戦での投手起用を考える上でも効果的だと言えます。

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③コースごとの球速の確認(Diamond App)

計測中においては、コースごとの球速の違いをチェックするのも有効です。

iPadアプリ「Diamond」の計測画面上の左側上部中央に球速が、左側下部には投手視点のストライクゾーンと投球コースが表示される

立ち投げや高めのコースへの投球だと球速が出るのに、低めだと球速が落ちていないか?など、コースごとの球速を確認することで、実戦で使えるボールが投げられているかどうかの確認ができます。

またコースごとの数値の確認は、球速のみならずその他の指標においても投球フォームや柔軟性、コンディショニングをチェックするために効果的であると言えます。

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④球種ごとの球速を確認(クラウド / Diamond App)

最後に、球種ごとの球速を比較・分析することも打者を抑えるための球種構成を考える上では重要です。

クラウドで計測できる球種ごとの計測データ(Velo=平均球速、Max. Velo=最高球速)
iPadアプリ「Diamond」で計測後に確認できるグラフ、表の一例。赤枠で囲った部分には、球種ごとの平均球速が棒グラフで表されている

たとえばアマチュアの投手では、変化球としてスライダー、カットボールの2球種を持っているのに、計測してみると二つの球種が同じような球速・変化量で差別化できていないということがよくあります。

当然打者の視点からすると、相手投手が投げる球種それぞれの球速・変化にバリエーションがあった方が狙いを絞りにくくなるので、自分の持ち球がきちんと投げ分けられているかはあらかじめ理解しておくべきポイントです。

また「球種ごとの球速差を確認する」ということから発展して、ネクストベース社の野球アナリスト・森本崚太さんは、著書の中で「変化球はフォーシーム(ストレート)との球速割合が重要」と説明されています。

変化球はフォーシームとの球速割合が重要
 変化球についても、フォーシーム同様に球速がカギを握る。単純に速ければ速いほどいいわけではなく、フォーシームと比較したときの球速割合がポイントになる。
 昔から「緩急が大事」という考え方があり、この言葉だけを見るとフォーシームとのスピード差があったほうがいいと思いがちだが、話はそう簡単ではない。最適な球速バランスが存在するのだ。

引用:森本崚太『野球データ革命』(竹書房、2021年)P.66

「最適な球種バランス」に興味がある方は、ぜひ以下の書籍をお手に取ってもらえたらと思います。

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4. まとめ

以上、「球速」について解説しました。

「球速」まとめ
1. 「球速」とは、投球されたボールのスピード(初速)である
2. 「球速」の活用法:ストレートは速ければ速いほど打者を打ち取る可能性が高まるが、打者を打ち取るためには球速だけでなく球質や配球、投球フォームなどあらゆる点に気を配る必要がある
3. 「球速」の分析方法:
①平均球速と最高球速の推移を確認
②セッション内での球速の推移を確認
③コースごとの球速の確認
④球種ごとの球速を確認

今後もラプソードで計測できるデータポイントがどのような意味を持つのか、どう活用したらよいのか等について解説していきます。

次回は「回転数」について取り上げます。


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