【投手編】第2回:投手のタイプから指導法を学ぶ~屈曲型と伸展型について~
皆さん、こんにちは!
Rapsodo Japanでは、トレーニングシーズンの特別企画として投打それぞれのプロフェッショナルの最新の理論を紹介し、現場の指導者や選手の皆さんの課題解決のヒントになる考え方を、note、YouTube、その他SNSなどで発信していきます。
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投手編の前回は、ベースボールコンサルタント・和田照茂さんに「指導者が野球を指導する上での心構え」や「基本的な考え方」について解説頂きました。第2回となる今回は、投手のタイプ別指導法についてお話頂きます。
前回の記事はこちらから↓
1. 多くの理論があり、選手にも様々なタイプがあることを理解して指導する
ーここまで「戦略ピラミッド」やベースフィジカルの評価についてお話を聞かせて頂きましたが、ここからは具体的に投球フォームや理論についてお話を伺います。まず現代では非常に多くの指導方法や考え方があるため、その中でどれが正解なのか悩まれる指導者の方も多いと思います。そういった指導者には、どんなアドバイスをされていますか。
和田:ピッチングにもバッティングにも、色んなバリエーションや理論があり、目の前にいる選手にどんな方向性の指導をすれば良いか判断できない指導者の方も多いと思います。実際、色んなタイプのピッチャーが結果を出していて、その中で「目の前の選手がどのタイプに属するのか」、「この理論はこの選手に合うか」の判断は、指導者にとってとても難しいです。
そこで私が考えているのは、ある程度のタイプを分類した上で指導できれば、より効率の良い指導ができるのではないかということです。
色んな指導者やトレーナーの方が、自身の中で行き着いた理論を提供するのは大賛成です。ですが、例えばAさんが教える理論とBさんが教える理論はどちらも正しく、結果が出ているものでも、その選手に合うか合わないかはわかりません。そこをアテンドするのが指導者の役目だと思いますし、パターン化して「この選手にはこれが合うのではないか」といった評価基準を明確化していかなければ、最終的に選手が迷ってしまうかなと思います。
方向付けを間違えることもあるので、指導者が知るべきことはたくさんあります。多くの理論があり、また選手のタイプにも様々な種類があることを理解した上で、指導に当たらなければならないかなと思います。
2. 踏み出す足が突っ張る投手と屈曲する投手、それぞれの特徴は?
ー具体例を挙げると、以前は日本ではあまり良しとされなかった踏み出す足が突っ張る投球フォームが日本でも非常に増えたように感じます。踏み出す足が突っ張る投手と屈曲した投手では、どんな違いや特徴があるのでしょうか。
和田:フットプラント(前足が地面に設置すること)からリリースの瞬間までに前足の膝が伸展(伸びる)する投手を「伸展型」と呼びます。
逆に、フットプラントからリリースの瞬間まで膝を曲げた状態でその角度が変わらない投手を「屈曲型」と呼んでいます。
まずはこの2タイプの、おおまかな見分け方からお話ししたいと思います。
「伸展型」は、右投手の場合だと左足が地面に接地してからリリースの瞬間まで左膝が伸展している特徴があり、その代わり右膝の角度が曲がりやすくなる傾向にあります。良い投手であれば、左膝の角度が160度くらい、右膝の角度が110度くらいになっている投手が多いです。
また「屈曲型」は、左足が接地してからリリースに向かっていくまでに、左膝が屈曲している特徴があり、リリースが終わってからは伸展していくので、タイミングとしてはリリースの瞬間に左膝が曲がっているかどうかが基準になります。右膝は反対に伸びた状態になりやすく、角度では左膝も右膝も135度くらいになる傾向があります。
ちなみに、右膝の角度と左膝の角度の和を見ていくと、良い投手であれば伸展型でも屈曲型でも260度〜270度くらいになる選手が多いです。最近では山本由伸投手(オリックス)のように、左膝の角度と右膝の角度がどちらも伸びており、左右の膝の角度の和が300度を越える投手もいます。
このフォームでも大きな問題はないのですが、左の股関節に乗らずにリリースに向かっており、ただ突っ立って投げているだけの選手もいます。このフォームでは、ボールに力が伝わらないので注意が必要です。
反対に右膝も左膝もどちらも曲がっており、足しても220度くらししかない投手もいますが、この場合は力の方向が下に向いてしまっており、腰が落ちているような投げ方をしています。この場合は注意が必要です。
3. 屈曲型と伸展型、それぞれのメリットとデメリットは?
ーここからは伸展型と屈曲型、どんな基準で選手に当てはめれば良いかをお話し頂きます。
和田:まず大事なのは、屈曲型、伸展型のメリットとデメリットをしっかりと指導者が理解することです。
伸展型のメリットは、膝を伸展させて地面反力を完全にもらうことができるので、やり投げのような感じで非常に出力が出やすく、スピードボールが投げやすいです。またリリースの高さが進展することで高くなるので、角度がつきやすくなることもメリットの一つだと思います。
一方でデメリットとしては、角度がつきやすくなる分、変化球は落ちるボールなどの縦の変化が増えやすくなり、横の変化は少なくなる傾向にあります。さらに体が出来上がってない段階で指でボールを押さえ込めなければ、ボールが高く浮いてしまいゲームメイクが難しくなる可能性もあるので注意が必要です。
続いて屈曲型ですが、前でリリースすることができるのでバッターを長く見る時間ができます。バッターを抑える確率を高めたい、ゲームメイク能力を高めたいのであれば、屈曲型の方がプラスなのかなと思います。また、横の変化量も増やしやすくもなります。
伸展型に比べて球速が出なかったり角度がつかないデメリットもありますが、球速を求めることでなかなかゲームが作れなかった投手が伸展型から屈曲型に変えるといったケースも見てきました。
もしフォームを変える場合に重要なポイントとしては、膝の使い方が変わると体の使い方やリリースまでのタイミングもズレることが挙げられます。膝を伸展するタイミングと、リリースするタイミングがズレていないか確認するには、投球動作を入れてしまうと逆にタイミングがズレる可能性があるので、そこを切り取ったトレーニングが必要になってきます。
メニューとしては、メディシンボールの叩きつけなどで、膝の伸展・屈曲とリリースするタイミングなどを掴んでおき、その後ネットスローやキャッチボール、ピッチングと段階を踏ませていけば良いと思います。
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以上、ベースボールコンサルタント・和田照茂さんに投手のタイプ別指導法について解説頂きました。当noteの動画版は、ぜひこちらからご覧ください↓
次回の第3回では、「投手の動作解析を行う際のチェックポイント」について詳しくお聞きします。お楽しみに!
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