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【投手編】第3回:投手の動作解析を行う際のチェックポイント

皆さん、こんにちは!
Rapsodo Japanでは、トレーニングシーズンの特別企画として投打それぞれのプロフェッショナルの最新の理論を紹介し、現場の指導者や選手の皆さんの課題解決のヒントになる考え方を、note、YouTube、その他SNSなどで発信していきます。

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投手編の前回は、ベースボールコンサルタント・和田照茂さんに「投手のタイプ別指導法」について解説頂きました。第3回となる今回は、「投手の動作解析を行う際のチェックポイント」についてお話頂きます。

前回の記事はこちらから↓

1. 体重移動のタイミングを評価する「3/4フェーズ」

和田 照茂(わだ・てるしげ)1981年6月18日生まれ。広島県福山市出身。 広島商業高校−大阪体育大学−履正社医療スポーツ専門学校鍼灸科 ​中・高体育科一種教員免許、鍼灸師資格を所有。 中学・高校・大学・社会人まで幅広くチームコンサルティングを行い、2007年にAAAアジア選手権野球日本代表トレーナー、2018〜19年には北海道日本ハムファイターズでチーフトレーナーを務めた。
現在も、多くのチームや選手を指導・サポートしている。

ーここまで伸展型、屈曲型のフォームについてお話を聞かせて頂きましたが、和田さんが投手の動作解析を行う際に、その他に注目するポイントはありますか?

和田:横から見た時の動画解析の一つに、「3/4フェーズ」という指標があります。まず「3/4」とは何かというと、プレートからフットプラント(踏み込みの足の接地)までの幅を1とし、その半分が1/2、さらにその半分が1/4になるので、プレート側から見て3/4の幅を意味します。

踏み込み足が着地する前のフェーズを「3/4フェーズ」と呼び、その時点での軸足の状態を確認する。

和田:スムーズに投球動作が行える投手は、踏み込みの足(右投手なら左足、左投手なら右足)が「3/4フェーズ」のタイミングを越えるまでは、軸足(右投手なら右足、左投手なら左足)の股関節、膝、足 (中指)の3点が一直線になります。

厳密には若干ズレることありますが、一直線のラインをある程度キープすることができており、軸足はプレートを踏んでいる状態です。「3/4フェーズ」で、この形を作ることができているかを見ています。

「3/4フェーズ」を越えるまでに、一直線のラインをキープできるか

和田:この形を作れていない投手は、以下の3つのパターンがあります。

  1. 二―イン:3/4フェーズを越えるまでに膝が内側に入り、一直線が崩れている状態

  2. ニーアウト:3/4フェーズを越えるまでに膝が外側に逃げて、一直線が崩れている状態

  3. ニーフロント:捕手側から見ると膝がつま先より前に出てしまい、臀部が下がっている状態

「3/4フェーズ」を越えるまでに、このニーイン、ニーアウト、ニーフロントが起きていないかということをチェックしています。

もちろん投球動作は回旋運動なので、3/4フェーズを越えてからは膝が内側に入っていき体重移動が起こります。そしてフットプラントを迎えた時点では、どの投手も膝が内側に入ってフットプラント側の股関節に体重が乗っていき、すでに体重移動が起きている状態です。

投球動作が非常に難しい所以は、 空中で重心移動が起きていることにあります。

逆にバッティングの場合は前の足のフットプラントが起きた時点では、まだ軸足の股関節、膝、足の一直線はキープされています。打撃では必ずつま先から接地しますが、接地後にかかとを踏んだタイミングで、軸足(後ろ足)の膝が内側に折れてきます。

体重移動が起こるタイミングは、投球と打撃では違うということを理解して欲しいと思います。

2. 肘の下がりを見る「両肩のライン」

ーフットプラントの後はリリースへと向かうと思いますが、リリースの際に気を付けるべきポイントはありますか?

和田:リリースの際は、肘の下がりを見ます。肘が下がっているかどうかのポイントは、セカンドベース側からリリースの瞬間を見るのですが、まずこの時に左肩と右肩を一直線で結び、延長線のラインを腕の方にも伸ばします。

両肩のラインの延長線よりも上にリリースが来ているかで「肘の下がり」をチェックする

和田:この延長線のラインに対して、リリースのボールの位置が高ければ肘は下がっていないことになります。

このラインよりも肘は低くなることが多いですが、逆にラインよりも上の状態だと、肩がインピンジメントになったりします。

もちろん肘が下がりすぎると今度は肘に負担をかけてしまうので、まずは両肩の延長線上よりボールが上にあるかどうかを見てあげてください。

3. 軸のバランスを見る「2本のライン」

和田:そしてもう一つ、セカンド側からの映像分析で確認できるのが軸のバランスです。

まずリリースの瞬間のベルトの中央の腰の位置、そして軸足の足首を線で結び、そのまま頭部にも延長線を伸ばします(下記白線)。そして今後は腰の中央と後頭部をラインで結び、下半身の方へ延長線を延ばします(下記赤線)。

白線(腰と軸足のライン)と赤線(腰と後頭部のライン)の交わる角度をチェックする

和田:腰の中央で2本のラインがクロスした状態になると思いますが、ボールに力がしっかり伝わっている選手は、この2本の線の角度がおおよそ10°以下になります。

この角度が20°や25°、もしくはそれ以上になる選手は頭部が外側に逃げてしまっていたり、踏み込む足の位置がズレて力の伝わりが分散してしまっている状態です。

投手の後ろのセカンド側からは、両肩の延長線上のラインと腰と足、腰と頭を結んだ延長線上のラインの差、この二つに着目してチェックして欲しいと思います。

これは普段の練習からチェックできると思うので、是非参考にして欲しいと思います。

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以上、ベースボールコンサルタント・和田照茂さんに投手の動作解析を行う際に注目するポイントについて解説頂きました。

投手辺の最終回となる次回では、「選手のパフォーマンスを評価する7つの要素」について紹介して頂きます。お楽しみに!

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次回の記事はこちらから↓


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