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野球アナリスト・森本崚太さんが語る「良いボールの定義」と「アマ球界におけるデータ分析の重要性」とは

MLB全球団、NPBでも多くの球団で活用が進むラプソード。

近年では日本でも大学、高校、中学硬式とアマチュア球界にも徐々に導入が進んでいますが、一方でユーザーの皆さまからは「活用方法がよくわからない・難しい」というお声を頂くことも少なくありません。

そこで公式noteでは、長年ラプソード商品を使いこなしている"コアユーザー"の方にその活用方法を聞くインタビュー連載「コアユーザーに訊け!」をスタートしました。

第3回に登場するのは、ネクストベース社に所属する野球アナリスト・森本崚太さん (@ryota_mrmt)です。

今回は先日行われた弊社展示会にて開催された森本さんのゲストプレゼンテーションの中から、データ活用に関連したお話を抜粋してお伝えしたいと思います。

トップアナリストとして多くのチーム・選手をサポートする森本さんの計測データの活用法や、森本さんの考えるアマチュア球界におけるデータ活用の重要性を、ぜひ参考にしてみてください。

良いボールの定義とは?

森本崚太(もりもと・りょうた)1992年生まれ。國學院久我山高校時代はエースとして活躍。現在は株式会社ネクストベースに所属するトップアナリスト。トラッキングデータをはじめとした野球データの解析を担当している。プロ野球球団や選手に対してフィードバックやコンサルティングを実施。侍ジャパン社会人代表ほか、プロ・アマ問わず数多くの投手の球質測定やピッチデザインを行っている。

ー選手を指導するにあたり、PITCHING 2.0で計測できるデータの中で何をチェックすべきでしょうか?

森本 非常に多くのデータが計測できるのはラプソードを使う大きなメリットかと思っています。

すべてのデータが重要だと言っても過言ではありませんが、選手が実際に練習する中で、このデータすべてを意識しながら毎球投げていくことは実質不可能です。またスポーツ心理学の観点からも多くの情報を取り入れすぎると逆効果ということも分かっていますので、ある程度使うデータを絞って選手には伝えています。

必要なデータを絞っていくにあたり、まず考えるべきはそもそも良いボールとはなにか?ということです。

これまでは指導者やキャッチャーから「ナイスボール」と言われたから良いボールと捉えるなど、その評価の仕方がとても抽象的だったように思います。ただボールの良し悪しを主観的な感覚に委ねて判断してしまうと、人によって基準がブレてしまうことにつながりますし、かなり問題があります。

では改めて良いボールの基準を考えるときに、究極の目的は「試合に勝つこと」だと考えると、投手ができることは「失点を1点でも防ぐこと」になります。そのためとても基本的なことになりますが、「失点を防げるボールが良いボール」と定義できます。

では失点を防げるボールとはなんでしょうか。ここで紹介したいのが「投手のリスク」という視点です。投手と打者が対戦すると、以下の7個のイベントのいずれかが発生します:

打席結果は上記7つのいずれかが発生することとなる。

森本 ポイントは、アウトになる確率がそれぞれのイベントによって異なるという点です。

たとえばライナーだと27%しかアウトにならないと言うと少し分かりにくいかもしれませんが、逆に打率.730と言い方を変えるとそのリスクの高さがよくわかるかと思います。

ーライナーのリスクの高さはよくわかりましたが、四死球の方がリスクと言う観点では高いんですね。

森本 四死球はアウトになる確率がゼロなので、ライナーよりもリスクが高いと言えます。学生野球ではよく「四球を減らそうぜ」と言われますが、その理由として四球が失点を防ぐ上で非常に危険なイベントであるからだ、という点は理解しておくべきと思います。

チームの勝利から逆算した、試合に勝つための良いボールとは

森本 改めて、良いボールの定義とはという話に戻ります。失点を防ぐことのできるボールを「良いボール」と定義すると、奪三振は100%アウトが見込める点でリスクが低く、そのため空振りを奪えるボールは失点を防ぐ上で有効であると言えます。

ただ全打者から三振を奪うことは難しいので、外野フライとかライナーといった長打が出やすいイベントを避けられる、ゴロを奪えるボールもまた失点を防ぐ上では有効であると言っていいでしょう。

野球は採点競技ではないので、球速や回転数が高いから勝ちになるわけではありません。結局は試合に勝つ、失点を防ぐためにどのようなボールを投げたいかが重要になります。

あなたのボールは空振りを奪うボールですか?それともゴロを奪えるボールですか?

この辺を整理してからデータを見る必要があると思います。

「打者に影響する指標」と「変化に影響する指標」

PITCHING 2.0の計測画面に見る、「打者に影響する指標」と「変化に影響する指標」

森本 少々回りくどくなりましたが、本題に入ります。ラプソードでチェックすべきデータとしては、「打者に影響するもの」と「変化に影響するもの」という二つの観点があります。

青枠で囲まれた球速と縦と横の変化量は、「打者に影響する指標」です。

空振り・ゴロを奪えるボールかどうかは、球速・変化量が大きく関係してきます。回転数が多いかどうかではなくて、球速や実際にどのような変化をしていたかによって7つのイベントの発生割合も変わります。

球速は速ければ速いほど良いのでシンプルですが、変化量は平均からどれだけ乖離するかによってボールの球質が定義されます。

ストレートについては、プロの投手の平均が20センチシュートして、40センチホップするボールであると言われています。こちらの右投手の計測データを例にとると、縦の変化量43.6センチ・横の変化量42.9センチは「平均的なストレートと比較して、少しノビがある&大きくシュートしている」球質であると言えます。

従来だと「シュート回転するボールはダメだ」とよく言われているかと思いますが、これはこれで右打者の胸元に食い込むような、嫌な球質のストレートだと言えますね。

変化量のチャートから自分のボールの特徴を把握して、失点を防ぐために有効なボールが投げられているかをチェックするのはとても重要です。

展示会では森本さん (右)のお話に多くの来場者が足を止めて聞き入っていました。

森本 次に「もっと空振りを奪えるボールにしたい」など個々の目標に応じて自身の球質改善に取り組むときに重要なのが、「ボールの変化に影響する指標」である回転数回転軸(ジャイロ角度・回転方向)になります。

回転数はどれくらいか、どの向きで回転しているかなどによって最終的にボールがどれだけ変化するかが決定されます。

よって自分自身がバッターを打ち取るためのボールを投げられているかを確認するときは、「バッターに影響する指標」である球速・変化量を、ボールの質を改善するときには「変化に影響する指標」である回転数・回転軸をチェックする、というような見方になるかと思います。

*より詳しく球速、変化量、回転数、回転軸などについて知りたい方は、ぜひ森本さんの書籍をお手に取ってみてください↓↓↓


アマチュア球界におけるデータ活用の重要性

ー最後に、実際に選手を指導している森本さんの視点から、アマチュア球界におけるデータ活用の重要性について教えてください。

森本 アマチュア球界にもデータ活用が広がっているなと、日々実感しています。データ活用が普及することで一番価値があると思うのは、選手個々で正しい目標設定ができて、効率的な努力ができる点ですね。

例えばアメリカ・メジャーリーグでは、試合で計測されたデータをすべて公開しています。そのため大谷選手のストレートはどんな球質なんだろうとか、ダルビッシュ投手のスライダーはどうなんだろうと調べることが出来るので、自分の計測データと比較することもできます。

このように数値で具体的に目標設定できるようになったのは、とても素晴らしいことだと思っています。

森本 最後に、埼玉西武ライオンズの高橋光成投手にインタビューした以下の記事からコメントを引用して、まとめとしたいと思います。

”僕は本当に感覚が疎い人間です。データを使う以前は、感覚の良し悪しと結果が結びつかない状態でした。わからないことをそのままにしていたのも事実です。でも、今はデータを使える環境にあります。感覚を数値化できるのは凄く良いことだと実感しています。”

以下の記事より引用

森本 プロになるような選手でさえ、「感覚が疎い」と感じているのはとても興味深いです。

アマチュアの選手たちはなおさら、分からないからこそデータを活用して効率的に努力していってほしいと思います。

・・・

以上、コアユーザーである森本崚太さんのプレゼンから一部を抜粋してお送りしました。

森本さんが所属するネクストベース社では、Baseball Geeksというメディアを運営しています。データの活用方法や科学的なトレーニング手法まで幅広く情報発信されていますので、ぜひこちらもご参考にしてみてください。

公式noteでは、今後も定期的に商品・サービスやその活用方法についての情報を発信していきます。

引き続きどうぞよろしくお願いします!

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