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ラプソード計測データ解説④「変化量」

皆さん、こんにちは!

今回はラプソードで計測できるデータポイントがどのような意味を持つのか、どう活用したらよいのか等について解説していきたいと思います。
第4回となる今回は、「変化量」についてです。

■計測できる機器:PITCHING 2.0PRO 2.0PRO 3.0

データ活用をしてみたいすべての選手、指導者、そしてチーム関係者の皆さまのご参考になればと思います。ご自身が知りたいと思うポイントから、ぜひご一読ください。
※ラプソードの導入については以下の2つの記事でまとめていますので、ご興味のある方はこちらも合わせてお読みください。

1.「変化量」とは

1-1「変化量」の定義

変化量とは、ボールの縦の変化と横の変化について、ボールが回転せずに重力のみが作用した場合を原点(0,0)とし、投げられたボールがどれくらいホップ、シュート、ドロップ、スライドしているかを数値で表したものになります。

各球種の球質を知る上では最重要なデータポイントとなります。

具体的にWBC日本代表 右投手の変化量チャートを例にして、変化量の見方を説明します。

下図でストレート(FB)を参考に変化量を見てみると、縦:約40cm 横:約20cmの位置に平均(赤点)がプロットとされていることがわかります。

これは投球されたストレートが40cmホップし、20㎝シュートしていることを示しています。例えばこの平均を基準として、縦が50㎝の位置にプロットされていれば、ボール一つ分ホップしているようになります。
※左投手の場合、横の変化量が反転(シュート成分とスライド成分が反転)します。

ここで重要になるのは、打者が見慣れていない変化量の球を操ることになります。変化量が平均に寄ってしまうと打者としては予測がつきやすいボールになってしまう可能性があるからです。

変化量を見ることで、球種ごとに投げ分けが出来ているのか、他の持ち球と比較して有効な球種かなど様々な分析ができます。

また注意点として、変化量は球速とも関連してきます。基本的に球速が遅いとボールがリリースされてからキャッチャーに到達する時間が長くなるため変化量は大きくなり、逆に球速が速いとキャッチャーに到達する時間が短くなるため、変化量は小さくなります。

同じ変化量であっても球速帯は異なる場合がありますので、球速も併せてご確認ください。

1-2.「変化量」の表示位置

ラプソードのiPadアプリ「Diamond」または「Rapsodo Beseball」において、投球のセッション時に変化量は計測画面の以下の位置に表示されます。

Diamond アプリ
Rapsodo Baseball アプリ (Vが縦、Hが横の変化量を表す)

2. 「変化量」の活用法

2-1.変化量チャートから見る投手の特徴

変化量チャートを見ることで投手の特徴を把握することができます。

具体的には、変化量チャートは基本、腕の振りに並ぶようになります。下図のように、投手Aであれば右投げのオーバースロー、投手Bであれば右投げスリークォーターとなります。

各投球フォームにおける変化量チャートの特徴をまとめます。
■オーバースロー → 変化量チャートの面積が縦長になります。縦に落ちる変化球が投げやすく、横に曲がる変化球が投げにくい傾向にあります。
■サイドスロー   → 変化量チャートの面積は横長になります。横に曲がる変化球が投げやすく、縦に落ちる変化球が投げにくい傾向にあります。
■スリークォーター → オーバースローとサイドスローの中間のため、様々なを球種を投げやすい特徴があります。

一般的に、変化量チャートの面積が大きいほど投球の幅が広がり、また腕の振りから外れるボールが投球できると有効とされています。

ご参考に当社のテクノロジーアンバサダーである大谷投手の変化量チャートを見てみます。オーバースローにも関わらず、横に大きくスライドするスイーパーやシュート成分が大きいツーシームがあり、腕の振りから外れるボールを投球していることがわかります。これにより、縦にも横にも大きく使えることが見て取れます(オーバースローとサイドスロー両方の特徴を持ち合わせています。)

しかしながら、腕の振りから外れる球種を投球することはかなり難しく、誰でも簡単に取得できるものではありません(当然、カテゴリーが上がればそういった球種を投球する選手もいます)

そのため、もし投球の改善を行うのであれば、まずは変化量のチャート面積を大きくすることに視点を当て、改善していく方が良いと考えます。

2-2.変化量から考える球質改善

2-1で説明したように、変化量チャートの面積を大きくすることが投球の幅を広げることにも繋がります。ここではどのように、変化量のチャート面積を大きくすればよいかを考えます。

①変化量が近い球種はないかを確認する
変化量が近いと打者目線では差異を感じない可能性があるため、各球種で投げ分けができているかどうか確認を行います。
➡各球種の投げ分けができることで自然と変化量のチャート面積も大きくなります。下図は元ヤクルトスワローズ館山投手の変化量チャートになりますが、上記の投手A、投手Bよりも各々の球種でしっかり投げ分けができており、変化量チャートの面積が大きいことが分かるかと思います。

②球種ごとに投球したい変化量の位置にきているか確認する
基本的にはストレートを基準に、他の球種が投げたい位置に変化球がきているか確認します。
➡理想とする位置に各球種の変化量を持ってくることで変化球チャートの面積も大きくなります。(例えば、ストレートと比較して、チェンジアップはシュート成分が出ているのか、スプリットはどの程度落ちているかなど)

では投手Aを例に取り、改善案を見てみましょう。

球種は多いですが、変化量を見ると
〇ストレート、ツーシームの変化量が近い
〇カットボール、スライダー、カーブの変化量が近い
という課題が挙げられます。ここで挙げた球種は変化量が近いため、打者目線ではほとんど同じに見えているかもしれません。

そのため、改善案としては
〇ツーシームのシュート成分を増やす
〇カットボールの球速を上げ、ストレートに変化量を近づける
〇スライダーとカーブのどちらか一方に球種を絞る
などが挙げられます。

このように、変化量チャートから自身の球質改善を行うことができますが、実際にはそれぞれの球速や投球フォームなども関係するため、試合結果なども踏まえて検討することが重要です。

3. 「変化量」の分析方法

ここからは、ラプソードで提供している分析ツールを使ってどのように「変化量」を分析できるのか、その事例をいくつか紹介していきたいと思います。

① 変化量の数値を確認(クラウド)

ラプソードのクラウドでは、各選手のセッションごとに変化量のデータを確認することができます。投球した1球ごとの変化量はもちろん、平均値やスプレーチャートなども確認することができます。

1球ごとの計測データ
投球した計測データの平均値
※Vertical Break→縦の変化量、Horizontal Break→横の変化量
変化量の平均値チャート
変化量のスプレーチャート

また3Dビジュアライゼーションで、ボールの可視化や比較が容易になっています。実際の投球を3Dで確認することで、打者目線からの投球を知ることができます。

これまで感覚でしか捉えることができなかった自身の各球種の球質が、データで確認することができます。また変化量の変化量チャートなどもクラウドから容易に分析できるため、効率よくパフォーマンス向上に繋げることができます。

②各球種の変化量を調整(Diamond App/Baseball App)

計測中においては、一球一球リアルタイムに数値を確認しながら、各球種の球質改善のため試行錯誤することができます。

Diamondアプリ
Rapsodo Baseball アプリ (Vが縦、Hが横の変化量を表す)

理想の変化量になるように、回転方向や回転効率などを調整し、データを見ながら投球してみてください。

この変化量を用いた分析に関して、朝日大学教授・林卓史さんの書籍である「球速の正体(東洋館出版社 発売日:2023/11/4)」が大変参考になりますので、ぜひご一読ください。

また当社では、実際にどのようにデータ(変化量)を見て、改善を行っているのかを様々な選手にご協力いただき、ショート動画として公開しています。ぜひこちらもご覧ください。

■元・東京ヤクルトスワローズ 館山昌平さん 

■TOKYO UNICORN  前沢力さん

■NEOLAB 代表  内田聖人さん

4. まとめ

以上、「変化量」について解説しました。

「変化量」まとめ
1.「変化量」の定義
ボールの縦の変化と横の変化について、ボールが回転せずに重力のみが作用した場合を原点0とし、投げられたボールがどれくらいホップ、シュート、ドロップ、スライドしているかを数値で表した
ものである。
2. 「変化量」の活用法:
変化量を見ることで自身の球質や投球タイプを知ることができ、球質改善や投球の幅を広げることに繋げられる。
3. 「変化量」の分析方法:
3-1.各球種の変化量の数値を確認(クラウド )
3-2.各球種の変化量を調整(Diamond App/Baseball App)

今後もラプソードで計測できるデータポイントがどのような意味を持つのか、どう活用したらよいのか等について解説していきます。

次回は「リリース」について取り上げます。


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