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館山昌平が見た!和田毅自主トレでのラプソードデータ活用法とは

MLB全球団、NPBでも多くの球団で活用が進むラプソード。

練習用の計測機器として、プロ野球の世界では特にシーズン前後の時期に計測数が飛躍的に増えますが、年が明けた自主トレの時期から多くの選手が計測をスタートします。

今回、福岡ソフトバンクホークスの和田毅投手からご要望を頂いたのをきっかけに、和田毅投手が主催する自主トレに弊社アンバサダーの館山昌平さんとともに計測サポートおよび取材をさせて頂くことになりました。

そこで今回の記事では、和田毅投手の自主トレに参加した4日間の体験をもとにして、自主トレ期間中における計測の意義と重要性について、和田投手および館山さんにインタビューしたお話をお届けします。

自主トレ期間中のデータ活用のみならず、この時期におけるアマ球界のデータ活用についてもお聞きすることができたので、ぜひご一読ください。

和田毅投手「現在地を知るのに、2月より1月に知る方が絶対に良い」

館山さん(右)の説明を聞く和田投手(左)

ー和田投手はなぜ今回の自主トレでラプソードを使いたいと思ったのでしょうか。

和田 僕自身ラプソードのデータを昨年のキャンプから見るようになって、回転数・回転軸などを確認しながら練習するのは、自分が今どの位置にいるか、調子が上がってきたかとか、ここまで来たら8割くらいまで戻ってきてるなという目安に使えるなと言うのを、ブルペンで計測していて感じていました。

また計測を行うことで、例えばいつもよりスライダーの軸が違うなとか、チェンジアップの軸が違うなとか、今の自分自身の現在地を把握した上で修正を図ることもできるようになります。

春季キャンプに入る前に、現在地を把握するのには2月より1月に知る方が絶対に良いと思い、タテ(館山さん)がラプソードのアンバサダーをやっていると知って、これはお願いしない手はないと思いました。

自分の現在地を知ることはとても大事ですし、またパフォーマンスを上げるという意味でも素晴らしい機器だと思っているので、今回の自主トレ期間中は有効活用したいと思っています。

自主トレは今年戦う武器を揃える貴重な機会

館山昌平(たてやま・しょうへい)1981年神奈川県厚木市出身。日大藤沢高校、日本大学と進み、2002年にドラフト3巡目でヤクルトスワローズに指名され入団。2008年に最高勝率、2009年には最多勝のタイトルを獲得するなど活躍し、プロ17年間で通算279登板、85勝68敗 防御率3.32の成績を挙げる。2019年に現役引退し、2020年~2021年は東北楽天ゴールデンイーグルスで投手コーチを、2022年~2023年は福島レッドホープスで投手チーフコーチを歴任。2023年よりRapsodo Japanのブランドアンバサダーに就任。

ーまずはじめに、プロ野球選手の自主トレについて教えてください。

館山 プロ野球選手は2月~11月の契約になっているので、12~1月は個人が球団の垣根を超えて練習することができます。自主トレ期間中は個々の能力を高めるため、体力向上のトレーニングやウエイトトレーニング、また技術面の見直しを行う貴重な機会となります。

今回和田毅選手から、16人という大所帯で、かつ投手が15人と大半を占める中で、ラプソードを使って計測したいという依頼がありました。

この1月の中頃からもうブルペンで今年戦う武器を揃えたいという、とても意識の高い集団だと思いましたね。また選手たちのキャンプインに向けた意識の高まりに加えて、年々ラプソードで計測することがスタンダードになっていることを改めて実感しました。

館山さんの説明を聞く投手たち:左から前田純投手 (ソフトバンク)、富田蓮投手 (阪神)、隅田知一郎投手 (西武)

ーこの時期に計測することのメリットとしてどういったことが挙げられるでしょうか。

館山 新しい球種の習得に取り組めることや、オフシーズンのトレーニング期間を経た体の変化に対して、いち早く現在地を把握できるということが大きいと思います。

ユニフォームを着てギアが一つ上がった時に「あれこんな感じじゃなかった」みたいな心と体のエラーをなくすためには、この時期に現在地を把握しておくというのは本当にいいことだと思うんですよね。

試合に行く直前くらいの能力じゃないと測れないというものではないですし、選手たちを見ていると練習で立ち投げだったり、遊び感覚でも回転軸の数値を見ながら変化球を試しつつ計測を行っています。

もちろん実戦で打者がどう反応するかですけど、準備段階で自分なりの変化球の形を作っている選手もいたので、この時期でも活用方法はいろいろあると思います。

活用法①新しい変化球の習得

選手たちはデータと合わせて、iPadアプリ「Rapsodo Diamond」と接続したiPadのカメラで撮影した映像を振り返ってチェックしていた。

ーそれではラプソードのデータを活用した変化球の習得について、詳しく教えてください。

館山 考え方の一つとして、「腕の振りから外れた変化のボール」を作ることが挙げられます。一般的な傾向として、ボールの変化量は腕の振りに沿って変化することが多いですが、そこから外れるボールを作るということです。

例えばある投手は、ストレートの強さはかなり安定してるんですけども、変化球に関してはすべて腕の振りに沿った変化になっているんですね。カーブ、スライダー、チェンジアップといった球種が腕の振りに揃って並んでいるので、バッターとしては比較的待ちやすいのかなと。

データを活用してできることとしては、例えばチェンジアップのシュート成分をもう少し増やしたりとか、スライダーをもう少し真横に曲げたりとか。そうすることで強いストレートもより生きるようになると思いましたので、変化量の観点からアドバイスを送りました。

変化量チャートの一例(右投手)。重力のみで変化したボールの座標を(0,0)としたときに、ボールの縦横の変化量を表す。腕の振りに沿ってプロットされることが多く、そこから外れるボールだと打者も反応しにくく対応が難しくなるとのこと。

館山 またある投手は、今まで取り組んでいなかったカットボールの習得に取り組んでいました。彼はツーシーム、スライダーで横の変化をつけることは非常にうまいんですが、その中間で「ストレートに見えるけどバッターからすると何投げているんだろう」と思わせるような球種を作りたいと。

自分でデータを確認しながらボールの回転軸を変えてみたり、キャッチャーの反応を見たりしてものの数分で「これだったらいけるかもしれない」という手応えを得ていたのは驚きましたね。

このように変化を大きくするだけではなくて、持ち球の中で小さな変化のボールを作ることも非常に重要だと思います。

昨年6月に計測した館山さんの球種別の変化量データ。ストレートと横変化の大きいスライダーやスイーパーという球種の間に、変化の小さいカットボールがあることが分かる。

活用法②制球の改善

計測データや動画を確認しながら、一球一球選手にアドバイスを送る

館山 またデータやボールの軌道を3Dで確認することで、制球力の改善にも繋げることができます。

例えばある投手はストレートとカーブ、スライダーを多く計測していますが、そのカーブとスライダーに関してなかなか制球ができないのに対して、自分の技術不足だと認識していました。そのためカーブについては力を加減して置きに行ったり、フォームを緩めてしまったりして苦労してるんですよね。

ただデータと軌道を確認すると、ボールは全部高めに抜けていてもしっかり曲がって変化していることが分かりました。つまり最初の投射角(縦のリリース角度)が上を向きすぎているだけ。

カーブ(緑)とストレート(赤)では、リリース時の角度が大きく異なる。ただ制球が大きく外れていてもカーブの変化量は大きく出ていることが分かったので、フォームを緩めたりせずリリース時の角度を調整することが課題と分かった。

館山 なのでリリース時の角度さえ揃えてあげればと思い、3D軌道の映像を見ながら「制球ができなくてフォームを緩めてしまうのはもったいない、投射角がこれだけ上向いてるんだよ」ということを説明しました。

グラフィックを見ることで、本人も「そんなに上に投げてるんですね」と自覚できていましたし、自分のリリースポイント、投球の軌道を可視化することで今後修正できると思います。

カーブが安定して上に抜けているのを見るに、同じフォームで投げることができる技術は持っているはずです。あとはリリース時の角度を如何に下げていくか、前で離していくか。

手元の調整だけでなく、テイクバックだったり、着地の足をしっかり踏ん張れるかとか、投球フォーム全体をチェックすることが大事だと思うんですけども、本人もそれを理解しているのでこれからどう変わってくるかかなり楽しみですね。

活用法③身体の成長に合わせたデータの確認

データを見ながら指導をする館山さんと、説明を聞く大野稼頭央投手 (ソフトバンク)と板東湧梧投手 (ソフトバンク)

ーまだ育成段階にある投手の場合、データはどのように活用したらよいでしょうか。

館山 高卒の投手などまだ若い選手が計測するときは、数字を求めて回転数を上げるとか回転軸を立てるとかよりも、まず自分の体を知ることが大事だと思うんですね。

自分の体をしっかり知った上で、自然に投げられる腕の位置が一番怪我をしにくいと思うんですよ。自然に投げられる腕の位置から計測されたデータを確認して、それに近い形の選手の中から目指すべき投手像を見つけていくことの方が大事だと思います。

もちろんトレーニングをしていく中で身長も伸びたり、体重も増えたりする非常に重要な時期だと思います。ただ継続して測ることによって、体の変化に対して自然に投げられる腕の位置やボールの質も変わってきますし、その中で現在地を把握しながら目指すべきタイプを柔軟に変えていかないと、大きな怪我に繋がる可能性もあると思います。

iPadアプリ「Rapsodo Diamond」でリアルタイムに表示される計測画面。投手は一球ごとに計測データを確認することができる。

館山 もう身長が止まって身体ができ上がってきて筋力が十分な状態であれば、数字を上げたり回転軸を立てたりとか、そういったこともできると思います。ただ高卒のピッチャーに関しては、成長曲線でいくと伸びる可能性も十分にあるので、自分の現在地や自然に投げられる腕の位置、回転軸などをまず理解するべきです。

継続して測らないと自分の身体ってもう本当にどんどん変化していきますし、そんな中でずっと同じ数字を求めるのはリスクでしかないので、特に若い投手ほど定期的な計測をお願いしたいですね。

アマチュアの投手もオフシーズンこそ計測を行うべき

選手ごとの特徴やデータについて解説する館山さん

ー最後に、同じくオフシーズンを過ごす高校生、大学生へメッセージをお願いします。

館山 オフシーズンは試合から離れて目的意識も薄くなりがちかもしれませんが、だからこそ今のうちに自分をレベルアップさせるのと同様に、定期的な計測を行って常に現在地を把握しておくのが重要です。

例えばトレーニングを行ったことで筋力はアップしても、春になって投球フォームにミスが起きていたことが分かってしまったとしたら、もう遅い。

キャッチボールや立ち投げ、その程度でも継続して計測することによって、ちゃんと正しい方向に進んでいるかチェックできますし、ミスが起きても修正がききます。プロ野球選手でも1月からこうして計測したいとなるわけなので、3月から対外試合が始まるアマチュアの皆さんも同様にこの時期に計測することは重要だと思います。

身体も非常に成長する時期ですし、数字に追われるのではなく現在地を客観的に把握することが重要だと理解して、継続的に取り組んでほしいですね。

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以上、和田投手および館山さんのインタビューをお届けしました。

館山さんのラプソード解説は以下の動画でも詳しく取り上げているので、こちらもぜひご覧ください!

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公式noteでは、今後も定期的に商品・サービスやその活用方法についての情報を発信していきます。

引き続きどうぞよろしくお願いします!

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