月間計測数2万7000球超え。会員が当たり前にラプソードで計測する、外苑前野球ジム(仮)とは
MLB全球団、NPBでも多くの球団で活用が進むラプソード。
近年では日本でも大学、高校、中学硬式とアマチュア球界にも徐々に導入が進んでいますが、一方でユーザーの皆さまからは「活用方法がよくわからない・難しい」というお声を頂くことも少なくありません。
そこで公式noteでは、長年ラプソード商品を使いこなしている"コアユーザー"の方にその活用方法を聞くインタビュー連載「コアユーザーに訊け!」をスタートしました。
第2回に登場するのは、外苑前野球ジム(仮)の代表を務める伊藤久史さんです。
外苑前野球ジム(仮)は、2022年3月の一か月間で投球数5,351球、打球数21,811球と、恐らく日本で最も多くラプソードの計測を行った野球ジムです。
そんな外苑前野球ジム(仮)のデータ計測に関する考え方を、ぜひ参考にしてみてください。
「データ活用」と「データ収集」のため、外苑前野球ジム(仮)は誕生した
ーまずは伊藤さんのこれまでの野球とのつながりを教えてください。
伊藤 僕は野球をプレーしていたのは中学までですが、野球自体はずっと観続ける生活をしていました。特にメジャーリーグが好きで、社会人になってからも多いと年間2~300試合は観ていたと思います。
ここ4、5年はメジャーリーグの中継でもデータ活用が取り入れられるようになりましたが、私自身も前職でAI(人工知能)を作る会社にいたこともあって、データ活用と野球を組み合わせることができたら面白いんじゃないかというのは、漠然と考えていました。
ーAIを扱っていた前職では、具体的にどのような仕事をされていたのでしょうか。
伊藤 たとえば金融会社さんと組んでいろんなデータから株価を予測するアルゴリズムを作ったり、大量の契約データの中から不正を行うBOTを見つけたりなど、さまざまな業界の顧客と多岐に渡る業務に当たってきました。
だからこそ殆どの産業でこういうAIの活用が行われているのを見てきた身からすると、スポーツ業界でも「もっとできるでしょ」と感じる部分はたくさんありましたし、僕が好きな野球においても何か活用できないかなとは思っていました。
ー「データ活用と野球の組み合わせ」という意味だといろんな手段がある中で、野球ジムの経営に行き着いたのはどういう理由でしょうか。
伊藤 テクノロジーを野球界に導入したら面白いと思っていましたが、いざ調べてみると気軽に計測できる施設がそんなにありませんでした。ラプソードとかトラックマン、ホークアイといった計測機器自体はある中で、もっとデータに触れる・活用できる場所があったらいいなと思ったのが理由の一つです。
また色んな人がデータ活用できるアプリ・ソフトウェアを作っていきたいと思っていたので、そういうデータを収集する場所を作っていきたいとも思っていました。
そのためそれらをうまく両立することができる場所として、野球ジムを始めました。
うちはラプソードを6台置いているので、ラプソードを使ったデータ活用ができる接点としての場であり、また僕らが作るアルゴリズムのためのデータ収集の場でもあるといった感じですね。
草野球プレーヤーから小学生まで、ほぼすべてのユーザーが当たり前のように計測している
ーこちらのジムは具体的にどういった方がどんな風に使っていますか?
伊藤 オフシーズンはたくさんのプロの選手も来てくれてそれは嬉しい限りですが、もともとのターゲットは「ラプソードを使ってみたいけどそんな場所がない」と思う一般のアマ選手です。
会員のうち約6割は草野球とかクラブチームでプレーする社会人で、残り4割は高校生以下のジュニア会員が占めています。ここも高校生・中学生が多いと思いきや、小学生も同じくらいいて、会員数は高中小とほぼ均等な割合ですね。選手は軟式・硬式両方とも混在しています。
ー会員さんはみなラプソードを使ってくれているのでしょうか。
伊藤 そうですね、使わない人はほぼいないと思います。ラプソードで計測することが当たり前になっているので、「ラプソードのために来る」というのはあまり感じないです(笑)。
軽い立ち投げのときやティー打撃のときからラプソードの電源が入っていたり、練習の一環として意識せずに計測されています。
意図したボールが投げれているか、「感覚とデータのすり合わせ」を行う
ー会員さんはラプソードで計測されるデータのうち、どの指標を特に重視しているように思いますか?
伊藤 それこそピッチングなら回転数、回転効率はどのアマチュアの皆さんも見られるなというのはあります。逆にそんなに球速は見てないんじゃないかと思いますね。
ヒッティングに関しては、打球速度と飛距離でしょうか。ティーから始めてトス、マシンと練習方法を変えながらも常に計測して数値の違いをチェックしたりしています。
ー投手なら回転数・回転効率を改善する際に、どういう取り組みをされていますか。
伊藤 そもそも論として「自分が意図したボールが投げられているか」が非常に大事だと思っています。うちはハイスピードカメラ「INSIGHT」も導入しているので、スロー映像を見ることも勧めていますね。
伊藤 たとえば回転軸が傾いているというときに、スロー映像を見ると課題が明らかになったりします。そうすると「もう少し手首立ててみますか」とか、「握り変えますか」といった話ができますよね。
映像も合わせて、感覚とデータのすり合わせを行うのが大事だと思います。
ー「感覚とデータのすり合わせ」という点に関して、先日小林亮寛さんに話を伺った際に、「感覚の鈍い選手が結構多い」と話されていたのが印象的でした。伊藤さんもそう感じることはありますか。
伊藤 感覚が鈍いというよりは、考える力が足りないなと感じることはありますね。どう投げたらどういうボールが行くかというのを考えずに投げてるので、変わったことに対して因果がわからない。つまり再現性がないんですね。
いま回転数がこうだったから、じゃあ指の位置を変えたらどう変わるかとか。そういう変化を見れるのがラプソードのいいところなので、一球一球試してやりましょうという話をよくしています。
「たまに10球だけ計測する」だけでは意味なくて、常に計測できるようにすることで単純にトライの回数を増やしたり、体調やフォームの試行錯誤含めいろんな状態を数値で把握しておくことは価値があると思います。
会員さんとともに「計測することが当たり前」という空気感を伝えていきたい
ー最後に、伊藤さんが考えるデータを計測することの重要性について教えてください。
伊藤 僕らとしては、計測することを当たり前にしないといけないと思っています。
一球一球データを取っていまの自分の現在地を知らないと、将来なりたい自分になるにはどうすればいいかということが、分からない。MLBではトラッキングデータも公開されているので、それを参考になりたいピッチャーに近づいたり、投げたいボールを作ったりということは可能です。
なのでデータを取り続けるということは重要ですし、イベントチックにたまに計測するというよりは、「当たり前に計測するよね」という空気感というか、雰囲気づくりも大事かなと思います。
うちの会員さんも、周りに「計測するのが当たり前」と言ってくれてると思います。会員さんは自身のラプソードのデータはiPhoneアプリで全部確認することができるので、絶対みんな自慢してるはずなんですよね(笑)。
伊藤 そうすることでみんな興味を持ってもらって、「やっぱりデータって取った方がいいんだ」とか、データ活用が遠いものじゃないことが分かってくれるといいですよね。
ダルビッシュさんのYouTube等で広まってはいるものの、「プロが使うもの」ではなくて、アマチュア選手でも「計測することが当たり前」になるといいなと思っています。
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以上、コアユーザーである伊藤久史さんのインタビューをお送りしました。
伊藤さんの外苑前野球ジム(仮)では、今後はラプソードだけではなくモーションキャプチャーなども導入して、さらに多くのデータが収集できるよう環境整備を進めていくとのことです。多くのデータが蓄積されたとき、どのようなアルゴリズムが作られていくのか・・。今から楽しみでなりません。
外苑前野球ジム(仮)の詳細は、以下の公式HPからご確認ください。
公式noteでは、今後も定期的に商品・サービスやその活用方法についての情報を発信していきます。
引き続きどうぞよろしくお願いします!