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高島誠トレーナーが語る、「選手の芽を摘んでしまわない」ためのデータ活用法【後編】

MLB全球団、NPBでも多くの球団で活用が進むラプソード。

近年では日本でも大学、高校、中学硬式とアマチュア球界にも徐々に導入が進んでいますが、一方でユーザーの皆さまからは「活用方法がよくわからない・難しい」というお声を頂くことも少なくありません。

そこで公式noteでは、長年ラプソード商品を使いこなしている"コアユーザー"の方にその活用方法を聞くインタビュー連載「コアユーザーに訊け!」をスタートしました。

今回は昨日公開した前編に続いて、トレーナー高島誠さん(@littlemac0042)のインタビュー記事後編となります。

前編はこちらから↓


打球速度は振り込むだけでは上がらない

高島誠(たかしま・まこと)Mac's Trainer Room代表。広島商業高校、四国医療専門学校を経て2001年からはオリックス・ブルーウェーブ (現オリックス・バファローズ)、2005年からはワシントン・ナショナルズでインターンシップトレーナーを務める。2007年に正式採用。2008年にMac's Trainer Roomを開業。現在はNPBトップ選手だけでなく、小中高生や大学生、社会人まで幅広くアスリートのサポートを行っている。

ー打球速度を上げるためにはどういった指導法が有効でしょうか。

高島 打球速度については、瞬発系のトレーニングですね。打撃練習だけでは上がっていきません。

よく「振り込んでスイングスピード、打球速度を上げるんだ!」と言いますけど、データを取っていくと確実に落ちていくのが分かります。

逆に言えば、「インコースを打てるようにする」という目的のために打球速度が下がっても数をこなして確率を上げていく、などの意図があるならOKだと思います。

ただ「打ち込めば打球速度も上がる」と考えてただ振り込ませるだけでは、練習の目的と効果がマッチしないので非常に危ない練習かなと思います。

ー何を上げたい練習なのか、というのを明確にした上で取り組むべきということですね。

高島 そうですね。なので課題を明確にして現在地を把握するために、打者の場合もコースごとの打球速度・角度を計測するのは有効です。

高めは良い角度で出せるけど、低めはダメだよねとか。内角に強い、外角に弱いもそうです。

そういう傾向から、コースごとのスイングの癖を見極めて改善につなげることができます。

計測に使用するアプリ「Diamond」のデータ閲覧画面。コースごとの打球速度・角度を可視化することで、強み・弱みを客観的に把握することができる。


バレルゾーンよりも打ち損じでもヒットが増える角度を探す

計測に使用するアプリ「Diamond」の計測画面。HITTING 2.0では打球速度・角度のほか、さまざまなデータポイントが計測可能

ー打球角度に関しては、どのように指導されているでしょうか。

高島 選手それぞれに合った打球角度を探すことが重要だと思います。ありがちなのが、打球速度が遅いのに角度をつけすぎるケースです。

例えばある高校の選手は、打球速度が130キロ後半~140キロくらいでしたが、2年生の夏には打率6割以上とかなり打っていました。ただ3年の春になると、「全然打てなくなりました」と相談に来ていて。

私は「だってホームランばかり狙ってるからやろ」と返したのですが、その選手は入学してからの約500打席で打ったホームランは5本くらいだったそうです。

プロ野球のレギュラーだと年間500打席くらい打席に立ちますが、シーズン5ホームランの選手は誰が思い浮かぶでしょうか?

※2022年シーズンの規定打席到達者の中で、5ホームランはオリックス・宗佑磨選手楽天・鈴木大地選手の2名

高島 そういう選手は、全打席ホームラン狙ってると思いますか?違いますよね。選手にも「去年の夏あなたはホームランを狙ってましたか?」と聞くと、「全然狙ってなかったです」と答えていました。

私は、「打ち損じがヒットになる」ということを大事にしています。

例えば、「バレルゾーン」を狙って打球角度を上げよう上げようとすると、打ち損じたときにはポップフライのアウトが増える傾向にあります。一方で12~15度あたりを狙っていれば、打ち損じても内野の頭を越えてくれたり、「角度が付きすぎたかな?」と思った打球が意外とスタンドインしたりすることもあります。

先の選手にも伝えましたが、ホームランを狙って結果を残し続けるのは難しいので、打ち損じてもヒットになりやすい角度を探そうね、という話をよくしています。

日々計測データが蓄積されるクラウドでは、打球速度・角度の組み合わせを可視化できる

ーそれでは、あまりバレルゾーンは意識しすぎない方がいいでしょうか。

高島 もちろん、打球速度が速ければ狙ってもいいと思います。ただし、高校生とかだとMaxの打球速度で考えがちなんですけど、「平均」の打球速度が一定のレベルにあるかが重要です。

バレルゾーンに乗るには打球速度158キロ以上が必要ですので、10キロ程度打球速度が落ちる置きティーで150キロくらい出ていないと、角度をつけるべきではないかなと。

投手が投げたボールを打つ場合にも、Maxが速くても打ち損じが多いと平均の打球速度は遅くなってしまいますので、遅い打球でもヒットになりやすい角度を狙った方が打率は残りやすい。

Maxがどんなに速くても、Maxと平均の差が大きい選手は試合では使えないよ、とよく選手には話していますね。


計測を通し「失敗」を重ねて課題に気付く、考える習慣を作る

施設2階はラプソードを始めとする多くの機器・モニターを完備し、常に計測できる環境となっている。

ー最後に、高島さんが考えるデータを計測することの重要性について教えてください。

高島 自分の現在地を理解することですね。結構計測してがっかりする選手もいるんですけど、逆に伸びしろに気づけてよかったねと伝えています。「良い数値が出ないかもしれないのでやめておきます」という選手も多いですが、「出ない」ということの方が大事です。

失敗ってとても大事なデータだと思っています。失敗を重ねてデータを蓄積することで正解に近づいていけるのに、失敗を避けて計測をしないようだと成長はありません。

失敗したり上手くいかないことを理解して、何故うまくいかないかを考えていけば段々と失敗することも減ってくるし、結果として成功に近づいていくはずです。

どうしても学生スポーツはリミットがあるので、早めに課題に気付くためにもラプソードは良いツールだと思います。

どんどん失敗して、「考える習慣」を作ってほしいですね。

・・・

以上、コアユーザーである高島誠さんのインタビューを2回に分けてお送りしました。

今回お話頂いた打者のデータ活用法については、10月28日発売予定の高島さんの新書籍「革新的打撃パフォーマンス 自分の打球速度、打球角度を知ればスイングの最適解がわかる」でより詳細に解説されているので、ご興味のある方はぜひお手に取ってみてください。


公式noteでは、今後も定期的に商品・サービスやその活用方法についての情報を発信していきます。

引き続きどうぞよろしくお願いします!

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