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広島東洋カープのアナリストに聞いた「選手へのデータの伝え方」

MLBやNPBの多くの球団で活用が進むラプソード。

春季キャンプでは、多くのチームがラプソードの計測機器を活用して練習に励んでいる様子がメディアで紹介されていました(下記は一例です)。

プロ野球の世界でもデータ活用が当たり前になりつつある中で、注目度が増しているのが「野球アナリスト」という職業です。

日米のプロ球団はもちろん、最近では国内の高校・大学野球チームでも学生アナリストが活躍するチームも増えてきました。

ただデータの面からチームをサポートする野球アナリストに興味はあるものの、野球アナリストとはどういうお仕事なのか、またどのようなスキルが求められるのかなど、詳しく語られていないことも多いと思います。

そこで今回、Rapsodo Japanでは広島東洋カープのキャンプ地・コザしんきんスタジアムを訪問し、カープのアナリストを務める飯田哲矢さんにお話をお聞きしてきました。

アナリストのお仕事について、実際の具体例とともにお話をお聞きすることができたので、ぜひご一読ください。

選手の感覚も大事にしながら、データを選手に伝えていく

飯田 哲矢(いいだ・てつや)1991年生まれ。神奈川県藤沢市出身。藤沢翔陵高校、亜細亜大学、JR東日本と進み、2014年にドラフト6巡目で広島東洋カープに指名され入団。プロ5年間で通算40 登板、0勝0敗1ホールド 防御率4.91の成績を挙げる。2019年に現役引退後はスコアラー、アナリストを歴任。現在はチーフアナリストを務める。

ー飯田さんは現役時代からデータ活用はされていたのでしょうか。

飯田:僕が現役の時はトラッキングデータっていうのはそんなに普及していなかったので、スコアラーさんに出してもらった資料しかありませんでした。そのためなかなか自分の球質を知ることは難しくて、当時は球速くらいですよね。

ただ、データに関してはめちゃくちゃ興味がありました。

引退した時にはいくつか球団職員の仕事を打診してもらったのですが、その中で自分が現役時代ぐらい熱くなれるものって言ったらやっぱりデータを扱うところかなと思い、今の仕事を選びました。

そういう意味では、今こうやってラプソードであったり、ホークアイで試合のデータを取得できているというのはすごくいい時代になったなと思います。

ーいまのお仕事内容についてお聞きしたいのですが、たとえば春季キャンプではアナリストとしてどんなお仕事があるのでしょうか。

飯田:春季キャンプに関しては午前中にブルペンで投手の計測、午後にメイングラウンドで打者の計測を行うことが多いです。

計測後はデータの集計作業を行い、ヒッティングのデータについてはそのクールごとの打球速度を貼り出して、選手やコーチに目を通してもらうようにしています。

選手も12月・1月と自主トレをしてきているので、キャンプが始まってすぐにラプソードで計測したいと言ってくれますね。そこで今の自分の現在地を知ってもらったり、去年と違って数値がどう変わったのかを正確に伝えていくために、日々準備を行っています。

ブルペンでPITCHING 2.0の設置を行う飯田さん

ーありがとうございます。選手にデータを伝える際は、どのようにアプローチしていますか?

飯田:データが100%ではなく感覚も大事にしながら、どう伝えていくかというところにフォーカスしています。

ー具体的には、選手にどのようにアプローチしているのでしょうか。

飯田:たとえば、カープにはストレートの横の変化量が50センチ以上あるいわゆる「シュート系」の投手がいます。宮崎日南キャンプでも、実際に計測したデータを見ながら「こういう人と違う動きをしているボールは武器になるよね」っていう話をしていて。

ただ沖縄に移ってきて、今日の計測では横の変化量が37センチ程度と少しムラがありました。

飯田:選手にこれは自分なりにどう思うのか聞いてみると、キャンプインから2週間経って体が動いてきた分、力が入っているみたいだと言うんです。

そこで選手自身も力が入った結果このシュート成分が失われているんだと気づいたようで、そこから少し力感をなくして、腕を遅らせるようなイメージで投げるように変えてみたそうです。

その感覚で投げてみるとまた50センチ近い数値に戻ったので、やはりデータをただ伝えるだけではなくて選手の感覚も聞きながら、データと感覚をすり合わせていくことが重要だと感じています。

やりがいは選手のデータへの関心が日に日に高まるのを感じること

大瀬良投手とコミュニケーションを取りながら、計測を行う飯田さん

ーカープは計測やデータに関心のある選手も多いですか?

飯田:そうですね、今はラプソードは結構取り合いになるんですよ。投手だと大瀬良、打者だと堂林は特にデータへの関心が高いですかね。

データに興味持ってくれる人が増えてきたことを、とても嬉しく思います。

計測を始めた最初の頃は回転数が多いとか少ないとか、そういう注目されがちなところに目を向けることが多かったですけど、今ではリリースの高さや角度のような、奥の深い数値まで見ていく選手も増えてきました。

たとえば、カープのある主力投手はフォークをウイニングショットとしていますが、空振りをバンバン取るくらい調子がいいときは、縦のリリース角度がストレートに近いマイナスの数値を記録しているときが多いです。

ただ一方で、春先に調子が悪いときなどフォークが打者に見極められやすいときは、縦のリリース角度がプラスになってしまうことに気付きました。

本人もデータから傾向は理解していて、今ではブルペンで計測しているときから、フォークのリリース角度は注視しているようです。

飯田:チーム全体としてデータに対する意識がどんどんレベルアップしてるのは、アナリストとしてはとても良いなと思っていますね。

また最近だと、新人選手はみんなアマチュア時代からラプソードを使ったことがあるって言うんですよね。僕らの時代は計測したことない選手がほとんどだったと思いますが、すごい普及しているなと実感しています。

いまでは「全くデータ分かりません」みたいな選手がいないので、アナリストとしてはめちゃくちゃやりやすいですね。

誰でもレベルアップできる時代だからこそ、計測してほしい

室内練習場で笑顔を見せる飯田さん

ーカープのアナリストと言えば、昨年引退した一岡竜司さんが今年からアナリストチームに加入するそうですね。同じ経歴の飯田さんから、何かアドバイスされたりしたのでしょうか。

飯田:彼とは同級生なんですけど、アナリストへの転身が決まってからは頻繁にやり取りをしていました。

飯田:彼もデータ自体は好きでしたが、アナリストとしてはより深くデータを理解する必要があります。なのでオフシーズンですけど何回もみんなで会社に集まって、自分も含めて勉強する機会を作っていました。

アナリストチーム全体で理解を深めて、今回のキャンプインを迎えられたんじゃないかなと思っています。

あとは、選手それぞれ性格や受け取り方が違う中で、どうデータを伝えるべきかというのは私の経験からアドバイスしました。

ー具体的には、どのような工夫をされているのでしょうか?

飯田:たとえばデメリットを聞きたいっていう選手もいれば、良いことしか聞きたくないっていう選手もいます。

それは選手と接していくうちに分かってくるところなので、アナリストチームで共有しながら、コミュニケーションの取り方を使い分けるように意識しています。出てきたデータをそのまま伝えるだけでは、伝わるものも伝わらないですよね。

ーありがとうございます。それでは最後に、飯田さんの視点から計測の重要性について教えてください。

飯田:やっぱり年齢を重ねていくと、身体もすごい変わってくると思います。良い意味でも悪い意味でも変わったことに対して受け入れるというか、計測して現在地を知ることはすごい重要だと思っています。

あと今ではデータを参考に変化球を習得していくということもできる時代だと思いますし、ピッチャーのレベルがどんどん上がっていくのも必然だと感じていますね。

本当に誰でもスキルアップできる時代になったと思うので、ぜひアマチュアの選手の皆さんも計測してみてほしいと思います。

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以上、広島東洋カープのアナリスト・飯田哲矢さんのインタビューをお届けしました。飯田さん、ご協力頂きありがとうございました!

次回は、千葉ロッテマリーンズのアナリストのインタビュー記事を公開予定です。お楽しみに!

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引き続きどうぞよろしくお願いします!

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